
獣医学部
南雲 隆弘
獣医外科学
岩手大学獣医学部の南雲隆弘助教らの研究グループは、水腎症を呈した猫の手術前の評価としてのCT検査の有用性を検証しました。これまで、尿管結石等が原因で水腎症を呈した猫の腎機能が手術によってどの程度改善するかを手術前に予測する方法はありませんでした。そこで、本研究では術前のCT検査から腎容積を測定し、これが術後長期の血中クレアチニン値と相関するかを検討しました。その結果、対側腎臓の容積と術後長期の血中クレアチニン値が強い負の相関を示すことが明らかになりました。本成果により、水腎症を呈した猫に対する外科治療において、手術前に術後の腎機能を予測することで適切な術式選択の一助となることが期待されます。
猫の水腎症は主に尿管結石などにより尿管閉塞になることで罹患し、年々その罹患数は増加しています。この尿管結石の治療の第一選択は、外科治療ではありますが、閉塞が解除された後も腎機能が完全に回復することは珍しく、多くの場合は慢性腎臓病に移行します。特に術後3ヶ月目の慢性腎臓病の臨床ステージが高い症例ほど予後が悪いことが知られていますが、猫の水腎症において、術前から腎機能の回復を予測できる指標は現在のところ明らかになっていません。本研究は、術前のCT検査による腎容積の測定によって術後腎機能を予測したものです。
本研究では、過去の診療記録から外科手術を行った水腎症の猫のCT検査データと血液検査データを収集し、その画像データから水腎症側とその対側腎臓の容積を測定し、術後3ヶ月以降(術後長期)で実施した血中クレアチニン値との相関関係があるかを検討しました。
術前に慢性腎臓病のない水腎症の猫では、術後長期の血中クレアチニン値と対側腎実質体積?体重比は強い負の相関が認められました。つまり、術前に慢性腎臓病のない水腎症の猫では、腎障害がより軽度な側の腎臓実質の大きさは、術後長期の腎機能を予測できる可能性があることが明らかになりました。
本研究成果は、水腎症を呈した猫に対する外科治療において、手術前に術後の腎機能を予測することで適切な術式選択の一助となることが期待されます。今後は、本測定法の簡略化や術前から慢性腎臓病のある水腎症猫において、術後腎機能を予測できる新たな診断法の確立が期待されます。
【掲載論文】
題目:Predictive utility of computed tomography-derived renal parenchymal volume for long-term postoperative renal function in cats with hydronephrosis
著者:Nagumo Takahiro, Hoshino Yuki, Kobayashi Saori, Fujiwara Reina, Yamasaki Masahiro, Nakata Kohei, Katayama Masaaki.
誌名:Journal of Small Animal Practice
公表日:2026年7月3日
DOI: 10.1111/jsap.70167.
本研究は、以下の研究事業の成果の一部として得られました。
?凤凰体育平台6年度岩手県獣医師会獣医学術等調査?研究助成 研究代表者:南雲隆弘